ヲトメのお城

ポップカルチャー沼のアラサーOLライターが、ひたすら好きなものをレコメンド。

幾原邦彦監督の「さらざんまい」が楽しみすぎる件について

今期はとにかく見るべきアニメ作品が多すぎる。

そのなかでもアラサー独女にオススメの作品をレコメンドしていきたいと思うのだけど、まずはフジテレビ系ノイタミナでスタートした「さらざんまい」について。

 

なぜわたしが「さらざんまい」に注目しているかというと、

この作品を監督しているのが、愛してやまない幾原邦彦だからである。

愛、を越えてもはや陶酔している。幾原監督の世界を愛している。

 

美少女戦士セーラームーン」シリーズ、「少女革命ウテナ」、「輪るピングドラム」、「ユリ熊嵐」などなど。

これまでわたしはありとあらゆる幾原氏の仕事を見てきた。

どちらかというと寡作な方であるので、そこまで網羅に時間はかからないが、ひとつひとつの作品の濃厚さが半端じゃない。1作品見た後の体力消費がすごい。圧倒的なエネルギーをぶつけられて目が醒めるのだ。アニメシリーズなら1話約30分を見た後で、物凄く考えるし、物凄く胸に残るし、自分の深く深くにずぶずぶと侵入してくる快感がイクニ作品にはある。ちなみに、イクニとは幾原監督の愛称である。(今後機会があればイクニ作品のひとつひとつをぜひご紹介したい。)

 

今までに見たことがない演出…「演出」というと敷居が高い感じがするが、とにかくこれまで見たことのない体験をさせてくれるのが幾原監督であり、イクニワールド。

これはもう作品を見てくれとしか言えないのだが、アニメでこんなにも自分の世界が変わるのか!と思った。まさに、エウレカ!な体験を与えてくれた、わたしをアニメ沼に引きずり込んだ張本人である。一応わたしも表現者のはしくれとして仕事をしているが、イクニ作品と出会わなければこの仕事は選んでいない気がする。

 

そんな御方が生み出す、新しいアニメ。

それが「さらざんまい」。見ないわけにはいかない。

 

女の子の“居場所”と“愛”について

幾原監督が描く作品の向こうには、いつも「女の子」の存在があった。

わたしが幾原監督を好きになったきっかけは、何を隠そうセーラームーンである。

イクニは、アラサー世代幼少期のバイブル、セーラームーンシリーズでいくつかのシリーズディレクターを担い、今なお名作とうたわれる劇場版セーラームーンRの監督でもある。

セーラームーンはセーラー服を着て戦う。女の子のまま、女の子として、戦う。

そんな姿が当たり前だと、格好良いのだと子ども心に刻まれた自分たちはなんて幸運なのだろうと思う。セーラームーンRの劇場版は全世界の女の子に見てほしい。

あれほど女の子に勇気を与えてくれるアニメがかつてあっただろうか?

女の子でも大切な人を守れるということ、女の子の友情がどれほど誇り高いかということ、そして、だれかを愛することがどれほど尊いかということ。

このクソみたいな世界でこれから生きていかねばならない女の子にまず最初に希望を与えてくれた、それがセーラームーンであり、劇場版Rだった。

その頃から一貫して幾原監督が描こうとしているものは、

他者との関わりのなかにある自分の存在であり、その間に生じる“愛”の存在なのだと思う。

 

同じく幾原邦彦監督作品に「少女革命ウテナ」という作品がある。

女の子でありながら王子様になりたかったウテナ

それぞれの願いをかなえたかった生徒会のメンバー。

ウテナの挫折は、わたしの挫折であり、そして、その先に続いていく希望でもある。

ここで描かれたのもまた、「女の子の居場所」であり、「愛」であり、「希望」だったのだと思う。

ウテナについては語りたいことが山のようにあるのでまたいつか言及したい。

 

 

手放すな、欲望は君の命だ。

sarazanmai.com

これが、「さらざんまい」のキービジュアルで使われているコピーだ。

幾原監督作品らしい、難解さとケレン味とエンタメ性を感じさせるビジュアルに、胸がときめく。

そんな幾原監督の最新作は「男の子」たちの群像劇。

個人的にはこれが一番新しいと思った。

これまで“女の子”について描いてきたイクニが、“男の子”の「つながり」――ひいてはきっと、男の子の居場所や存在や愛について――をどう描いていくのか。

それが楽しみでならない。(「輪るピングドラム」では兄弟が主人公であったが、あれも裏を返せば陽毬やりんごたち女の子の物語であったとも言える)

 

そして、幾原作品における「ハコ」のメタファーが再び現れたことについてとても興味がある。

「さらざんまい」では、作品のキーワードともなっている<欲望>がAmazonで注文すると送られてくる例の段ボールのような「ハコ」で表現されている。

実は、これまでにもイクニ作品では、学園という「ハコ」や世界という「ハコ」、自分が囚われ閉じ込められてきた「ハコ」という存在が数多く描かれてきた。

そんなハコを壊したり、革命したり、運命を乗り換えたりしてやってきたイクニワールドで、2019年はAmazonのような風体の「欲望のハコ」にとらわれた彼らが一体どうするのか。

 

幾原監督作品はとにかく今の我々(アラサー)世代との親和性が高い。

それはやはり幼少期のファーストコンタクト、<女の子がセーラー服を着て戦う>という、衝撃的な出会いを果たしたセーラームーンによるところが大きいと思うのだが、それ以降も、ずっと幾原邦彦のキャリアと我々アラサーは同じ時代を生きてきた。

同じ時代に寄り添って戦ってきた運命的な間柄なのだ。

セーラームーンウテナなんかは、むしろ今の年齢になって見てこそ響くものがある。

そういえば、セーラームーンR劇場版のときに幾原監督は28歳くらいだったはず。

28歳であの演出をしたのだ。そう思うと…なんかもうアラサーのパワーってすごい。

 

ちなみに、幾原監督はググってもらえればわかるのだが、顔面もとても格好良い。

エヴァ渚カヲルくんのモデルとなっているのが、何を隠そう幾原監督だとか。)

アニメに興味があってもなくても「さらざんまい」を見てみてほしい。

難解さと奇怪さの向こうに、必ず愛がある。

わたしが一番それを期待しているのだ。